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パナソニックが、二度に渡りV字回復を果たした理由
さて、今日はパナソニックが、二度に渡りV字回復を果たした理由について取り上げたいと思います。
パナソニックは4月末に2015年3月期通期(2014年4月~2015年3月)の連結決算を発表しました。
売上高は前年度比3%減の7兆7150億円の減収にも関わらず、営業利益は同25%増の3810億円の増益で、中期計画目標の営業利益率5%を達成したのだそうです!
では、何故パナソニックはここまで業績回復をすることが出来たのでしょうか。
■パナソニックをV字回復に導いた二度の組織改編
パナソニックはその前身である松下電器産業の時代から、※事業部制をいち早く取り入れた企業として有名です。
★事業部制組織
トップマネジメントの下に管理単位の事業部と呼ばれる事業別の独立ユニットを並列に配した組織形態で、その最大の特徴はユニットごとの分権管理にある。
<メリット>
・トップマネジメントの管理業務からの解放
・現場の状況を反映した迅速な意思決定
・部門幹部の管理意識の醸成
・管理者の早期育成
<デメリット>
・開発、購買などの機能の複数事業部での重複
・利益責任意識に伴う短期利益追求への偏重
・事業部間の競争意 識による不協和音発生
その歴史は古く、スタートは創業者の松下幸之助氏による昭和8年(1933年)にまで遡ります。
それから約70年の長きにわたり脈々と受け継がれた事業部制は、独立採算に代表される形でいわば社 内で切磋琢磨し合う文化を生み出し、その後の世界的発展の礎となる組織風土として根付いてきたと言えます。
しかし90年台後半に家電のデジタル、ネットワーク化の急速な進展により、国内家電業界は予期せぬ激震に見舞われます。
製品サイクルの短期化や価格の急激 な下落は、業界に構造不況的な打撃を与えました。
パナソニックはこの局面を打破すべく、01年に大改革に着手します。
その目玉となったのが、創業時から脈々と続いていた事業部制の廃止でした。
■パナソニックはなぜ事業部制をやめたのか
廃止最大の理由は、事業部制のデメリットでもあげた事業の重複による無駄の削減でした。
この段階で、松下電器の“魂”とも言える事業部制の廃止への賛否はあったものの、収益面への貢献は明確に結果として生み出され、業績V字回復を果たします。
しかしこの回復もつかの間、待ち受けていたものはプラズマディスプレイの失敗に代表される、市場ニーズの取り違え等による業績の再低迷でした。
それはまた、組織編成の変更により技術と営業が分離された
「※職能別組織のデメリット」が大きく現れた結果とも言えます。
★職能別組織
トップマネジメントの下に製造部門、営業部門、管理部門などが並列でぶら下がる形。
トップへの権限集中、分業、専門化が主な特徴。
<メリット>
・トップ中心の強固な組織統制の実現
・分業集中による規模の経済
・専門化による各機能の熟練
<デメリット>
・トップへの負担偏重
・セクショナリズムによる組織内コミュニケーションの停滞
・専門化によるマネジメント人材不
・利益責任の所在の不明確さ
■そしてまた事業部制への回帰
世界市場制覇をめざしパナソニックへと社名を変更した松下電器でしたが、製品路線に生じた迷いに加え、円高不況とアジア勢の台頭による低価格化の波をモロにかぶり、12年には史上最大の巨額赤字を計上します。
これ受けてとった背水の戦略が事業部制への回帰だったのです。
「プラズマの失敗に、営業と生産の現場 の連携が必要と改めて実感した」
とのトップ判断でした。01年の廃止から実に12年ぶりの復活でした。
そしてこの事業部制への回帰は、同社に再び驚異的なV字回復をもたらせました。
確かに円安の恩恵もありますが、同じ恩恵を受けているはずのソニーが依然業績低迷を続けている姿を見ると、回復の要因は別にあったと考えられます。
すなわち、事業部制への回帰です。
この判断の好結果は市場ニーズを踏まえた「選択と集中」による事業再編という形で現れました。
具体的には、プラズマディスプレイからの全面撤退、住宅関連部門、自動車関連部門への軸足シフトです。
パナソニック代表取締役社長である津賀一宏氏は、2014年度の決算を受け、
「2015年度はついに売上を伸ばす時期、成長の年であると位置づける。
2014年度に営業利益5%を達成していなければ、
積み残した課題とあわせて売上を伸ばさなければいけなかったが、
達成出来たので、全力で成長路線に向か ういいスタートが切れる」
と話しています。
松下電器とパナソニック、2度に渡る業績低迷期での大胆な組織編成の見直しは、
それぞれがこんなにも大きな効果をもたらしたのですね!
私もまだまだ勉強不足なので、企業のことや社長、業績、歴史などについてもっと積極的に学んで肥やしにしていこうと思います。